icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc

研究成果

2025.07.28

化粧品の効果が実感できない一因は角層の不均一な厚さ!角層を整える成分「グルコノラクトン」

高い効果を期待して買った化粧品が、思ったほど効かなかったことはありませんか?その原因は「厚さが不均一となった角層」かもしれません。大塚製薬は化粧品の効果の個人差について研究し、剥がれにくくなって厚くなった角層が有用な成分の浸透を妨げていることに注目。角層の重層化を改善し、角層を整える成分「グルコノラクトン」にたどり着きました。

人によって化粧品の効果に差があるのはなぜ?

大塚製薬は、健康的な肌を育んで本来の美しさを引き出すために、化粧品(Cosmetics)に医薬品(Medicine)の概念を加えて、健康的な肌に導く“健粧品(Cosmedics)”をご提供しています。

大塚製薬では、肌のターンオーバー(生まれ変わり)を正常化し、健康的な肌に導く成分(エナジーシグナルAMP)を開発し、製品を展開してきました。ところが、同じ製品を使っていても、効果が出やすい人とそうでない人がいることがわかってきました。

角層は、年齢を重ねるにつれ厚くなることが知られています。それは、加齢により肌のターンオーバーが滞り、古くなった角層細胞がうまく剥がれ落ちず、残ったまま重層化してしまうからです。多くの人を対象に試験をしたところ、重層化の程度には個人差があることが明らかになりました。また、エナジーシグナルAMPは角層の厚さにより浸透性が低下してしまうことも分かってきました。つまり、これが効果の差につながってしまうと考えられました。
ターンオーバーの乱れ
また、角層が重層化すると、メラニンの蓄積によるシミ・くすみ、カルボニル化タンパク質の蓄積による黄ぐすみ、化粧のりの悪さやごわつきといった肌悩みにつながります。
そこで大塚製薬では、重層化による不均一な角層を改善し、均一でなめらかな角層にするためにはどうすればいいのかを研究しました。

角層の重層化を改善する成分「グルコノラクトン」

まず私たちは、古い角層の剥離を促して新しい角層にする成分を探しました。決して容易な道ではありませんでしたが、数多くの成分の中から機能性、肌へのやさしさなどの条件を満たしている成分を探し当てました。その成分は「グルコノラクトン」です。

角層細胞同士は細胞接着分子とよばれる糊の役目をする分子によって強固にくっついています。この分子が機能するにはカルシウムが必要です。

一方、グルコノラクトンは“キレート作用”を持つことが知られています。この作用は、角層細胞から余分なカルシウムを取り除くことができるため、古い角層の細胞接着分子の機能を弱めることで新しい角層への生まれ変わりを促すことにつながります。

均一でなめらかな新しい角層になることで、肌のキメ・シミやくすみ・肌の明るさが改善されるとともに、有用な成分が浸透しやすくなり、効果が得られやすくなることが期待されます。

グルコノラクトンの効果

実際に、グルコノラクトンに古い角層の細胞接着分子の機能を弱めることで新しい角層への生まれ変わりを促す“キレート作用”があるかどうかを検証しました。

はじめに、角層の生まれ変わりが目で見て分かるように、古い角層部分に色を付けました(写真左)。ここにグルコノラクトンを含む試験品を毎日塗布すると、7日後には古い角層を示す色のついた部分が消失していることを確認しました。つまり、グルコノラクトンの作用により、古い角質細胞は剥がれ落ち、新しい角層へ生まれ変わったことが証明されました。
グルコノラクトンの効果

左:何も塗っていない肌
右:グルコノラクトンを塗った肌

また、グルコノラクトンを含む試験品を28日間塗布することによって、角層の重層化も改善することがわかりました。下の写真(左)では角層が重層化し不均一になっていることを示す色の濃い部分が多いことが分かりますが、グルコノラクトンを塗布した角層(右)では重層化の少ない均一な角層になることが明らかになりました。
グルコノラクトンの効果

左:何も塗っていない角層
右:グルコノラクトンを28日間塗布した後の角層

さらに、古い角層が重層している部分には黄ぐすみの一因であるカルボニル化タンパク質が蓄積しやすくなります。グルコノラクトンを28日間塗布することによって、カルボニル化タンパク質が少なくなることも確認できました。

このように、グルコノラクトンは古い角層の剥離を促して新しい角層にすることで、角層の重層化を改善し、シミ・くすみを改善し、肌を明るくする作用が期待できます。加えて、角層を均一化することで肌がなめらかになり、キメが整って、有用な成分の浸透や化粧のりが改善することも期待できます。

肌が本来持つ力をサポートするために

健全な肌は保湿され、pHは弱酸性に保たれています。このような肌環境では角層を分解する酵素が働きやすく、古い角層の剥離が促されるため角層の重層化も起きにくいとされています。しかし、加齢とともに肌は乾燥し、pHはアルカリ性に傾いてしまうため、この酵素が働きにくくなります。その結果、角層は重層化してしまいます。

グルコノラクトンは、肌本来の弱酸性条件において、角層を分解する酵素と似たような働きを持つことが分かっています。つまり、肌を十分に保湿しながらpHを弱酸性に保つ製品を開発することは、グルコノラクトンの作用を発揮させるだけでなく、本来の肌環境に導くためにも重要だったのです。

ケミカルピーリングとの違い

ちなみに、角層を剥がすという意味では、グルコノラクトンはケミカルピーリングと似ているように感じるかもしれません。しかし、実は大きな違いがあります。

医療機関で行うケミカルピーリングは、角層を溶かしたり、過度にターンオーバーを起こさせたりする成分を皮膚に塗ります。これは角層を剥がす作用が強いので、皮膚は角層を再生させようとします。このように、あえて新しい角層をつくらせることで、皮膚のトラブルを解決しようとするものです。

一方、グルコノラクトンの作用は、本来なら剥がれ落ちるはずなのに残ってしまっている古い角層が正常な範囲内で剥がれやすくなるように、分解酵素の働きをサポートするというものです。自然な形でのターンオーバーを促すので、ケミカルピーリングよりも肌にやさしい方法であると言えます。

まとめ

グルコノラクトンは古い角層の剥離を促して新しい角層にします。それにより、シミ・くすみを改善して肌を明るくします。加えて、肌がなめらかになってキメが整い、化粧のりや成分の浸透の改善も期待できます。

化粧品で期待する効果を得やすくするために、角層をやさしく整えるグルコノラクトンを試してみてはいかがでしょうか。
【監修】原野 史樹

【監修】原野 史樹

大塚製薬株式会社
大津スキンケア研究所 所長
1992年大塚製薬入社
健粧品の基礎試験、有効性評価を担当し、2011年から大津スキンケア研究所所長。

Related